要点
- シソーラスは言葉をつなぎ、タクソノミーは情報を分け、オントロジーは意味を結びます
- AIが身近になるほど、情報の構造を理解する力が重要になると考えています
これまでこうした情報を扱うためのノウハウは情報アーキテクチャに携わる人やライブラリアンといった一部の人たちに必要なものだと考えられてきました。
しかし、すでに私たちは感覚や経験だけでは扱いきれない情報量を日常に抱えており、さまざまのところで似たような課題を抱えているのではないのでしょうか。
情報の管理がさまざま人の立場や解釈によって混乱を生み、業務が停滞したり、重大な情報の漏洩につながったりするのも、こうした情報に対する私たちの考えがまだ成熟していないからかもしれません。
今回は、「シソーラス」「タクソノミー」「オントロジー」について取り上げ考えてみたいと思います。
情報整理の観点について
以下、ChatGPTにそれぞれの役割の違いについてまとめてもらいました。
- シソーラス:言葉を揃える
- タクソノミー:置き場所を決める
- オントロジー:意味のつながりを記述する
| 整理術 | できること | 主な使い所 |
|---|---|---|
| シソーラス | 呼び方の迷いを減らす | 用語集、サイト内検索、タグ整理 |
| タクソノミー | 探す場所の迷いを減らす | フォルダ整理、商品カテゴリ、FAQ分類 |
| オントロジー | 情報のつながりをたどれるようにする | 人物・組織・出来事の関係整理、関連情報の検索 |
シソーラス:言葉をつなぐ
『情報アーキテクチャ 第4版―見つけやすく理解しやすい情報設計』によると、シソーラスとは以下のように定義できるそうです。
検索向上のために同義性、階層性、関連性を明らかにした制限語彙のこと。シソーラスはこれら3つの語義関係を基本にしながら、単純な制限語彙の構造物の上に成り立っています。
つまりシソーラスは、その言葉自体が持つ性質を語彙によって整理することで、検索をする際に、その時必要な情報を取り出しやすくすることに目的がありそうです。
たとえば、「ワイン」を探している人が「ぶどう酒」や「葡萄酒」と入力することがあります。これらを同義語として結び付けておけば、使う言葉が違っても同じ情報へ案内できます。さらに「果実酒」を上位語、「スパークリングワイン」を下位語、「葡萄」を関連語として結ぶことで、検索の範囲を広げたり絞ったりしやすくなります。
最初から完璧に作る必要はなく、身近な言葉について、よく使う表記・別の呼び方・関連する言葉を一覧にするだけでも、小さなシソーラスになります。
国立国会図書館のWeb NDL Authoritiesでも、同様の整理方法でまとめられることを確認できます(Web NDL Authorities「ワイン」)。
タクソノミー:情報を分ける
タクソノミーは、情報を一定の基準で分類し、主に階層として整理する仕組みです。たとえばネット通販なら、「食品」の下に「飲料」、「飲料」の下に「コーヒー」や「お茶」を置く、といった構造が考えられます。
上位の分類から下位へたどれるため、情報の全体像を見渡しやすくなりますが、複数の軸を一つの階層へ押し込むと、迷いが生まれることもあります。「旅行先で撮った家族写真」は、「旅行」と「家族」のどちらにも置けそうです。この場合は主となる分類軸を一つ選び、ほかの軸をタグで補う方法もあります。
オントロジー:意味を結ぶ
オントロジーは、言葉を揃えたり情報を分類したりするだけでなく、ものごとの関係に意味を与える仕組みです。
たとえば、映画の情報には「作品」「監督」などが登場しますが、ここで「監督が作品を撮る」と関係の意味まで記録します。すると、「この監督の作品に出演した俳優」のように、複数のつながりをたどりやすくなります。
Wikipediaなどを支えるWikidataでは、人物や作品などを一つひとつの「項目」として扱い、「監督」「出演者」といったプロパティで関係を記録します。普段目にする百科事典の裏側にも、ものごとの種類と関係を明示する考え方が使われています(Wikidata「プロパティ」)。
AI時代に情報を整理するということ
AIの普及によって、私たちは膨大な情報へ簡単にアクセスできるようになりました。しかし、手に入る情報が増えるほど、それらをどのような言葉で捉
え、どのように分類し、何と結び付けて理解するかが重要になります。
同じデータを見ても、置かれた状況や価値観によって、人が読み取る意味は異なります。AIが提示する回答についても同じです。答えを受け取るだけで
はなく、その中で使われている言葉や分類、情報同士の関係を捉えなければ、内容を適切に評価することはできません。
ここまで見てきたシソーラス、タクソノミー、オントロジーは、単なる情報整理の専門技術ではありません。それぞれ「言葉」「分類」「関係」という
観点から、私たちが情報を理解するための土台を与えてくれます。
AIを使える人と使えない人の差以上に、AIが示した情報を整理し、自分なりに判断できる人と、そうでない人の差が広がっていくのかもしれません。情
報アーキテクチャの考え方は、これから一部の専門家だけでなく、誰もが身に付けるべき基礎教養になっていくと考えています。
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